蓬莱山輝夜を語る上で欠かせないのが、迷いの竹林に棲むもう一人の不老不死者・藤原妹紅(ふじわらの もこう)との関係です。
その因縁は千年以上前の奈良・平安期に遡ります。輝夜にかつて求婚し、難題「火鼠の皮衣」を突きつけられて恥をかかされた貴族・車持皇子(あるいは藤原不比等をモデルとする人物)。その娘である妹紅は、父を辱めた輝夜を深く憎悪していました。輝夜が月に帰る(と見せかけて逃亡する)際、地上に残した「蓬莱の薬」を奪い取って服用した妹紅は、皮肉にも自らも不老不死となり、人間社会を追われて彷徨うことになります。
幻想郷で再会を果たした二人は、毎日のように命を奪い合う死闘を繰り広げています。しかし、この戦いは常人の憎悪劇とは決定的に異なります。どれほど肉体を破壊されても再生する二者にとって、殺し合いはもはや「退屈な永遠を埋める唯一の刺激」であり、自分と同じ時間を生きられる唯一の同類への「親愛の表現」に昇華しているのです。
心理学における「共依存」と実存的連帯感が混ざり合ったこの関係性は、東方Projectの物語群の中でも屈指の深みを持つドラマとしてファンの心を捉えて離しません。