投扇興の道具は極めてシンプルです。床の上に置かれた桐の台座である「枕(まくら)」、その上に立てられたイチョウ型の和紙と鈴で作られた的である「蝶(ちょう)」、そして競技者が手にする専用の「扇子(投扇)」の3点のみで構成されます。
競技者は枕から約1間(約1.8メートル)離れた位置に正座し、交互に扇子を投げて枕の上の蝶を落とします。1試合における投擲回数は、公式競技や体験会において1人あたり5投〜10投で競われるのが一般的です。扇が手元を離れ、蝶と扇が静止した状態の「形」を見て、審判(行司)が源氏物語や古典にちなんだ「銘(役名)」を判定し、得点を記録していきます。
重要なのは、「的に当たりさえすれば良い」という単純な的当てではない点です。蝶がどこに落ちたか、扇子が開きながらかぶさっているか、あるいは枕の上に奇跡的に残っているかなど、落ちた瞬間の幾何学的な美しさと偶然性が点数に直結します。風の抵抗を受けやすい和紙の扇を使うため、ミリ単位のブレが全く異なる役へと変化するドラマチックな採点構造になっています。