苗字から離れ、普通名詞としての「山野」に目を向けると、この語句は「山と野原」「自然の山野」を意味します。漢字それぞれの成り立ちを遡ると、日本の原風景が鮮やかに浮かび上がってきます。
「山」は連なる山並みの稜線をかたどった象形文字であり、「野」は「里(集落)」と「予(広がる)」を組み合わせた文字で、人の手が入りきらない広大な平野を指します。つまり「山野」とは、人間が暮らす領域のすぐ外側に広がる豊かな自然環境そのものを表す言葉です。
言葉としての使い分けにおいては、単体で「山野を駆け巡る」と使う際は「さんや」「やまの」の双方が通用しますが、複合語では音読みの「さんや」が主流です。代表例が、野山に自生する草花を指す「山野草(さんやそう)」や、山野を踏み越えて険しい道を行く意味の四字熟語「山野跋渉(さんやばっしょう)」です。