ペット保険大手各社が公開する傷病ランキングにおいて、犬の通院理由の第1位または第2位に毎年ランクインするのが外耳炎(Otitis Externa)です。獣医学的統計によると、垂れ耳犬の外耳炎発症率は立ち耳犬に比べておよそ2.5倍から3倍に跳ね上がります。
犬の耳道は人間と異なり、垂直耳道から直角に曲がって鼓膜へ至る「L字型構造」をしています。ただでさえ湿気や分泌物が排出されにくい構造に加え、耳介が蓋のように覆いかぶさることで、耳道内部の湿度は梅雨時から夏場にかけて80%以上に達します。この高温多湿な密閉空間は、常在菌である酵母様真菌「マラセチア(Malassezia pachydermatis)」やブドウ球菌にとって爆発的な繁殖場となります。
飼い主が早期に察知すべき初期シグナルは以下の4点です。
- 特有の臭い(耳の悪臭):耳をめくった瞬間に漂う、酸っぱいチーズのような発酵臭や生乾き臭。
- 頻繁な首振り・耳掻き:パタパタと激しく頭を振る、後肢で耳の根元を執拗に引っ掻く仕草。
- 耳垢の性状変化:黒褐色〜暗褐色のベタついた耳垢や、黄色の膿状分泌物の増加。
- 耳介の内側の発赤・腫脹:皮膚が赤く熱を持ち、触れられるのを嫌がって唸る、または痛がる反応。
放置された外耳炎は慢性化し、耳道の軟骨が石灰化して狭窄する「耳道肥厚」へと進行します。こうなると内科的治療が効かず、全耳道切除術(TECA)という大掛かりな外科手術を余儀なくされるケースも少なくありません。