事故から約5年後の1994年、雁氏は舞台『残侠・半蔵一番風呂』で芸名を「雁龍太郎」と改め復帰を果たしました。母・中村玉緒さんの個人事務所に所属し、舞台やテレビ時代劇などに出演を重ねて再起を図ります。しかし、1997年に父・勝新太郎さんが逝去すると、徐々に芸能界での居場所を失っていきました。
仕事への意欲の減退、生活の乱れ、母への経済的依存が続く中、中村玉緒さんは断腸の思いで決断を下します。「これ以上甘やかすことは本人のためにならない」として、自身の個人事務所から籍を外し、住居費や生活費の支援を完全に打ち切る「経済的絶縁」を断行したのです。
玉緒さんの突き放しは、我が子の自立を願う母心ゆえの荒療治でした。しかし、雁氏は自立の足がかりを掴めないまま名古屋市内へ移り住み、母や姉との連絡も途絶えがちになっていきました。
そして2019年3月下旬、雁龍太郎氏は自宅マンションで人知れず倒れ、息を引き取りました。死因は急性心不全、享年54。一人暮らしの部屋で発見されたのは死後数日が経過してからであり、いわゆる「孤独死」という痛ましい幕切れでした。玉緒さんをはじめとする遺族のもとに悲報が届いたのは同年5月頃であり、世間に公表されたのはさらに半年以上が経過した2019年12月のことでした。