当主を失い、崩壊の危機に直面した松島屋を救ったのは、悲劇を乗り越えて名跡を継いだ十三代目片岡仁左衛門だった。父と親族を一度に失うという絶望の淵に立ちながらも、彼は歌舞伎の灯を消さないために舞台に立ち続けた。
十三代目の芸は、深みと哀惜を湛えていた。『菅原伝授手習鑑』の菅丞相や『女殺油地獄』の与兵衛など、極限状態に置かれた人間の心理を巧みに表現する名演は、観客の心を深く揺さぶった。演劇に命を捧げたその姿は、惨劇の陰に隠れがちだった松島屋の芸風を再び輝かせ、戦後歌舞伎の復興を力強く牽引したのである。