方角を意識して災いを避け、福を招く文化は、決して新しい流行ではない。遠く平安時代、都の鬼門を守り、国家の安寧を担った伝説の陰陽師・安倍晴明の時代にまで遡る。当時は「方忌み」や「方違え」として、悪い方角を迂回して目的地へ向かう手法が貴族たちの間で日常的に行われていた。
時代を超えてこの神秘的な世界観が再び大衆の心を掴んだ契機の一つが、大ヒットを記録した映画『陰陽師』だ。スクリーンの中で描かれた呪術や陰陽道の知恵は、現代人の知的好奇心を刺激し、「方位が人の運命を左右する」という概念を広く定着させた。