自鳴琴が電気を使わずに芳醇な音色を生み出す仕組みは、1796年にスイスの時計職人アントワーヌ・ファーブルが考案した機構がベースとなっています。
その基本構造は極めてシンプルでありながら、寸分の狂いも許されない精密機械の粋を集めています。
1. 動力部(ぜんまい):巻き上げられたぜんまいが解ける力を利用して回転エネルギーを生み出します。
2. 調速機(ガバナー):ぜんまいの急激な回転を抑え、一定のテンポで曲が流れるようにスピードを制御します。
3. シリンダー(円柱):表面に無数の微細な金属ピン(ピン打ち)が植え込まれており、楽譜の役割を果たします。
4. 櫛歯(コーム):異なる長さに削り出されたスチール製の金属弁で、シリンダーのピンに弾かれることで固有の音階を響かせます。
19世紀後半には、曲の交換が容易な金属ディスクを用いるディスク・オルゴールも登場し、現代のジュークボックスのように人々を魅了しました。当時のアンティークオルゴールが放つ重厚な倍音は、デジタル音源にはない自然な揺らぎを持ち、現在でも高い芸術的評価を得ています。