五十嵐淳子という表現者の足跡を振り返るとき、日本映画史における彼女の鮮烈な輝きを外すことはできない。大手の松竹において頭角を現した彼女は、単なるアイドル的女優の枠にとどまらず、深みのある人間模様を演じ分ける実力派として評価を高めていった。
とりわけ1979年に公開された今村昌平監督の傑作『復讐するは我にあり』での演技は、今なお多くの映画ファンや批評家の語り草だ。冷酷な犯罪者の影で揺れ動く人物たちの複雑な業を描いた作中で、彼女が見せた凛とした佇まいと繊細な感情表現は、作品全体に独特の緊張感を与えていた。
スクリーン越しに見せる一瞬の表情の陰影、内に秘めた情熱。当時の映画界において、彼女が残した足跡は今なお色褪せることがない。