「声」一本で全編を牽引し、批評家や映画ファンを唸らせた復帰劇がある。
2016年に公開されたアニメーション映画『この世界の片隅に』。片渕須直監督が描く戦時下の広島・呉で懸命に生きるヒロイン・すずの声を演じたのは、「のん」だった。彼女の発する素朴で温かみのある声と言葉のニュアンスは、登場人物に命を吹き込み、観客の胸を深く揺さぶった。
作品は口コミから異例の大ヒットを記録し、国内外の映画賞を総なめにする快挙を達成。実写のドラマ出演が制約を受ける中でも、彼女が秘める圧倒的な表現力と演技の質は健在であることを、声という媒体を通じて日本映画界に強烈に示しつけたのである。