学術的な視座に立つと、状況はまったく異なる色彩を帯びる。学問としての文化人類学において、人間による食人行為はアントロポファジーと呼ばれ、厳密に分類・研究されてきた歴史がある。
人類史における食人は、大きく二つに分かれる。部族外の敵を倒してその生命力や勇気を奪う「他者食(外食人)」と、亡くなった身内への敬愛や追悼として遺体を食す「身内食(内食人)」だ。たとえばパプアニューギニアのフォレ族に見られた死者儀礼は、愛する者の魂を肉体に取り込み、共同体の中で再生させるための厳粛な祈りであった。そこには悪意も狂気もない。彼らにとっての食人は、死者と生者を結ぶ神聖な儀礼だったのである。