ここからは、初心者でも再現性が高く、一日中ピタッと衿元が身体に吸い付く長襦袢の着用手順を、ステップバイステップで解説します。
ステップ1:衿芯の入れ方と正しい向きの確認
衿芯(えりしん)を長襦袢の衿裏にある掛衿の端から差し込みます。ここで確認すべきは衿芯の湾曲です。平らなストレートタイプでない場合、軽くカーブを描いている衿芯は「カーブの山(外側へ膨らんでいる側)を首側・外側へ向け、谷(凹んでいる側)が喉元・身体側へ沿うように」通すのが鉄則です。向きが逆になると、喉元を圧迫したり衿先が外側に反り返る原因になります。衿芯の中心が長襦袢の背中心(背中の縫い目)と完全に一致しているかを必ず指で探って確認します。
ステップ2:羽織りと背中心の決定・衣紋抜き
長襦袢に両腕を通したら、左右の衿先を持ち、背中心が背骨の真ん中にきっちり通るよう左右均等に振ります。次に、襦袢の衿を両手で軽く持ち、背中の「衣紋抜き」(襦袢の背中に縫い付けられた布通し)を下方へゆっくり引き下げます。衣紋を抜く深さの目安は、成人式やパーティーなどの礼装で「こぶし1個分(約7cm〜8cm)」、普段着や街着であれば「指3〜4本分(約5cm)」です。引きすぎるとだらしなくなり、浅すぎると窮屈に見えるため、体型とTPOに合わせた角度を作ります。
ステップ3:半衿の合わせ方と角度の固定
衣紋を抜いた状態をキープするため、左胸側の衿(下前)を先に身体へ巻き付け、その上から右胸側の衿(上前)を重ねます。衿の合わせ位置は、「喉仏の下にあるくぼみ(鎖骨の間)を半衿の交差点が指1本分隠す程度」が最も上品で崩れにくいポジションです。交差角度は鋭角すぎると首が詰まり、鈍角(90度近く)に開くと胸元がはだけやすくなります。一般的には鎖骨のラインに自然に沿わせた約30度から45度の角度で胸を包み込みます。
ステップ4:長襦袢の腰紐の結び方と留め位置
衿合わせを手でしっかりと押さえたまま、もう一方の手で腰紐を取ります。結ぶ位置は「みぞおち」ではなく、「アンダーバスト直下の肋骨の固いライン」です。背中側で紐を交差させて前へ持ってきますが、前で結ぶ位置は中心(みぞおち)を避け、左右どちらかの脇寄りにずらして駒結びまたは花結びにします。中心で結び目を作ると、外側の帯板に圧迫されて激痛の原因になります。余った紐の端は、横に走る胴回りの紐に上から下へしっかりと挟み込みます。
ステップ5:コーリンベルト(着物ベルト)の正しい使い方
腰紐の代わりに、あるいは腰紐の上にコーリンベルトを用いる場合、留める高さは「左右同一のアンダーバスト水平ライン」です。まず下前(右脇)の胸下で衿の端をクリップで挟み、背中を通って上前(左脇)の衿を挟みます。長さを事前に調節し、軽く指一本が入る程度のテンション(引っ張り具合)に設定します。ゴムを強く張りすぎると、ゴムの復元力によって衿が左右から引っ張られ、時間の経過とともに衿元が喉元へ詰まってしまうため、「留めるだけで引っ張らない」強さに留めるのがコツです。
ステップ6:伊達締めの締め方とシワの処理
最後に伊達締め(だてじめ)を当てて全体の面を固定します。伊達締めの中央をみぞおち前に当て、背中へ回して交差させ、再び前へ持ってきて左右を結びます。この時、胸元や背中にできた余分な空気やたるみを、両脇の縫い目方向へしっかりと指でしごき出す「シワ取り」を行います。前後の面が平滑になり、摩擦力が増すことで、以後の動作によるズレを完全にシャットアウトできます。