「御用改め」という言葉を正しく理解するには、江戸時代の統治構造と行政・警察用語の文脈を紐解く必要があります。単語を分解すると、当時の身分制社会と公権力の仕組みが明確に浮き彫りになります。
まず「御用(ごよう)」とは、幕府、朝廷、藩主など「公儀(公権力)」からの命令や公務そのものを意味します。封建社会において公儀の命は絶対であり、個人の私事(わたくしごと)とは厳格に区別されていました。そして「改め(あらため)」は、調査、吟味、臨検、身元確認、家宅捜索を意味する法的手続きの呼称です。すなわち「御用改め」とは、「公儀の公務による強制捜査・取り調べである」という法執行の宣言にほかなりません。
江戸の治安を預かっていたのは、町奉行所に属する町奉行・与力・同心たちでした。彼らが不審な町家や犯人の潜伏先に踏み込む際、不法侵入や辻斬りと明確に区別し、公権力の正当性を示すために発したのがこの台詞のルーツです。これに対して抵抗することは「公務執行妨害」および「公儀への反逆」とみなされ、現場での即座の討伐・斬捨(きりすて)の口実となりました。
なお、日常会話で混同されやすい言葉に「御用聞き」があります。「御用聞き」は商家が顧客の家を巡回して注文を取る営業行為、あるいは奉行所の手先(岡っ引きなど)を指す俗称です。公権力を振りかざして強制捜査を行う「御用改め」とは、意味も権限も全く別物です。