世界一醜い魚は濡れ衣?ニュウドウカジカ本来の姿と過酷な深海生態

世界一醜い魚は濡れ衣?ニュウドウカジカ本来の姿と過酷な深海生態

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ニュウドウカジカ(英語名:ブロブフィッシュ / Blobfish、学名:Psychrolutes marcidus または近縁の Psychrolutes phrictus など)が世界的な注目を浴びた発端は、2013年に英国のNGO「醜い動物保存協会(Ugly Animal Preservation Society)」が主催したオンライン投票でした。パンダやトラのような愛らしい絶滅危惧種ばかりに保全の関心が集まる風潮を皮肉り、保護の網から漏れがちな不格好な生物に光を当てるという趣旨で行われたキャンペーンにおいて、ニュウドウカジカは約1万票のうち最多得票を獲得し、公式マスコットに選定されたのです。

メディアを通じて世界中に拡散されたのは、2003年にニュージーランド沖の深海調査(NORFANZ探査)で採集された個体、通称「Mr. Blobby」の標本写真でした。大きく垂れ下がった団子鼻のような突起、への字を描く不機嫌そうな口元、そして自重で平たく潰れたピンク色の肉体は、まるで漫画から抜け出た疲弊した中年男性のような滑稽さを漂わせていました。

しかし、海洋生物学者や研究者たちは一様にこのレッテルに異議を唱えています。深海調査用の無人探査機(ROV)が水深1,000メートル付近で捉えたニュウドウカジカ本来の姿は、陸上の破綻した姿とは似ても似つきません。水圧に満ちた生息域では、体表はきめ細かく引き締まり、丸みを帯びた頭部から尾びれにかけて自然なテーパーを描く、端正で穏やかな魚そのもののプロポーションを誇っています。世界一醜いという評価は、人間が人間の都合で大気圧下に引き上げたことで生じた「形骸化の悲劇」を嘲笑っていたに過ぎません。

高橋 健太
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高橋 健太

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。