スマートフォンやLEDパネル、AR技術が日常となった現代においても、多くのファンはライブ前夜にハサミとカッティングシートを手に取り、夜遅くまで手作業に没頭する。
なぜ既製品やデジタル画面ではなく、手作業なのか。ファンへの取材で共通して聞かれるのは、「時間をかけて作ったという事実そのものが推しへの誠意である」という感覚だ。フォントを選び、文字を切り抜き、配置に頭を悩ませるプロセス全体が、公演に向けた感情の高まり(参戦服の準備や遠征計画と並ぶ一連の儀式)と結びついている。
手作りゆえのわずかな歪みや個性が、既製品にはない温かみを生む。デジタル時代だからこそ、手触りのあるアナログな媒体が「一回性の体験」として特別な価値を持ち続けているのだ。