島根県松江市八束町の大根島といえば、全国屈指の牡丹(ぼたん)と高麗人参の産地として知られます。その静穏な景観の中に佇む松江市八束町のうなぎ名店「うなぎ処山美世」は、中海の風土とともに独自の食文化を育んできました。
山美世が遠方からの訪問客をも魅了し続ける最大の理由は、素材への徹底した前処理と焼きの技術にあります。大根島は火山活動によって形成された玄武岩質の島であり、ミネラルを豊富に含んだ清冽な地下水が湧き出します。店内の生け簀(いけす)では、全国各地の産地から厳選して仕入れた良質な国産活鰻をこの伏流水に数日間泳がせ、特有の泥臭さを完全に除去。身を引き締め、脂のキレを最大限まで高める工程を踏んでいます。
焼きの技法は、蒸しを入れずに強火の遠火で一気に焼き上げる関西風の「地焼き」を採用。炭火の遠赤外線効果によって皮目はパリッと香ばしく、肉厚な身にはジューシーな脂の旨味が閉じ込められます。さらに、職人が串を打つ指先の感覚と焼き場の温度を秒単位で見極めることで、他所では味わえない独特の歯ざわりとふくよかな口どけを生み出しています。