日常のチャットツールや電子メールにおいて、感覚的に「聴く」や「訊く」を多用しているビジネスパーソンは少なくありません。しかし、企業の公式文書やビジネスメールでの正しい漢字表記においては、文化庁が告示する「常用漢字表」のルールを正確に把握しておく必要があります。
現行の常用漢字表において、「きく」という訓読みが認められているのは「聞」のみです。「聴」の訓読みは「ゆる・す(聴す)」などに限られ、「きく」は表外訓とされています。また「訊」という漢字自体が常用漢字表に含まれていない表外字です。そのため、官公庁の公用文、新聞各社、大手メディアの用字用語基準では、原則としてすべて「聞く」に統一表記する運用が徹底されています。
実務で頻出する質問する時の訊くと聞くの違いに関しても、私信やエッセイでは「訊く」と書くことで「問いかけるニュアンス」を強調できますが、対外的なビジネス文書では「聞く」と記載するか、あるいは「質問する」「お尋ねする」と言い換えるのが最も洗練されたビジネスマナーです。
さらに注意が必要なのが、ビジネス敬語「お聞きする」の使い方です。取引先や上司に対して「お聴きする」と漢字表記してしまうと、教養の不足や過剰な自己演出と捉えられかねません。また、「お聞きになられる」といった二重敬語の誤用も散見されます。
自社側の行為として「尋ねる」あるいは「聞く」をへりくだって伝える場合は、謙譲語の「伺う」「拝聴する」「お尋ねする」を用いるのが正しい敬語表現です。相手に「聞いてほしい」と促す場合は「お聞きいただけますでしょうか」とするのが自然な表現となります。