本作の最大の推進力となっているのが、スペイン映画界の重鎮ペドロ・アルモドバルと、圧倒的な存在感でスターダムを駆け上がったアナ・デ・アルマスという異色の組み合わせだ。色鮮やかな色彩美と人間の愛憎を粘り強く描いてきた巨匠が、今回の現場ではこれまで以上に苛烈な演出を繰り広げている。テイク数は異例の回数に及び、キャスト陣を精神的な限界まで追い込む手法がとられた。
主演を務めるアナ・デ・アルマスは、かつてない繊細さと狂気を孕んだ役に挑んでいる。カメラが回っていない時間すら役柄から抜け出せず、極限の緊張感がスタジオ全体を包み込んでいたという。スクリーン越しに伝わる圧倒的なリアリティは、この二人だからこそ到達し得た高みだろう。二人の情熱が衝突し融合した結果、スクリーンには言葉を失うほどの静かな狂気が立ち現れている。