科学的関心の高さにもかかわらず、メタンハイドレートの実用化には多くの障壁が立ちはだかる。技術的課題、経済的採算性、環境への影響という三つの側面から慎重な検討が必要だ。
採掘技術の複雑性
海底下のメタンハイドレートを効率的に採取するには、地層の安定性を保ちながら分解を制御する高度な技術が求められる。急激な圧力変化は地盤の崩壊を引き起こし、大規模な海底地すべりにつながる危険性がある。
現在研究されている主な手法には、減圧法、加熱法、化学薬剤注入法があるが、いずれも大規模商業生産には至っていない。コスト対効果の面でも、従来の天然ガス採掘と競争できるレベルには達していない。
気候変動との関連性
メタンは二酸化炭素の約25倍の温室効果を持つ。永久凍土や海底のメタンハイドレートが地球温暖化によって自然分解すれば、大気中のメタン濃度が急上昇し、温暖化をさらに加速させる「正のフィードバック」が発生する可能性がある。
過去の地質記録には、メタンハイドレートの大規模崩壊が急激な気候変動を引き起こした証拠が残されている。約5500万年前の「暁新世・始新世境界温暖化極大期」では、海底のメタンハイドレートが分解し、地球の平均気温が5〜8度上昇したと考えられている。