レチノールが妊娠中に敬遠される根本的な理由は、ビタミンAの過剰摂取によって引き起こされる「催奇形性(さいきけいせい)」リスクにあります。ビタミンAは胎児の細胞分化や器官形成に欠かせない必須栄養素である一方、母体内の血中濃度が過度に高まると、胎児の頭蓋骨、心臓、中枢神経系などの形成異常を引き起こすことが医学的に証明されています。
厚生労働省が定める『日本人の食事摂取基準』において、妊婦(特に妊娠初期)のビタミンA耐容上限量は1日あたり2,700μgRAEと設定されています。この基準値を超えてビタミンAを大量摂取し続けると、胎児へのリスクが跳ね上がります。
化粧品として肌に塗るレチノールは口から摂取するわけではありませんが、角質層を通過して毛細血管から微量ながら血流に乗る可能性がゼロではないことから、国際的にも「妊娠中はレチノイド類(レチノール誘導体を含む)全般の使用を避けるべき」という予防原則が徹底されています。