映像化は絶対に不可能——長年そう叫ばれ続けてきた『十角館の殺人』のドラマ化が成功を収め、世界配信されたことで、海外のミステリファンの間には「綾辻ショック」とも呼ぶべき地鳴りが広がった。無人島に集まった7人の大学生、旧中村青司が建てた奇妙な建築、そして一人ずつ消えていく凄惨な連続殺人。古典的なクローズド・サークル(孤島もの)の様式美を踏襲しながら、たった一行で世界を一変させてしまうトリックの威力は、言語や文化の壁をあっさりと吹き飛ばしたのだ。
海外の大手書籍レビューサイトでは、「この叙述トリックの破壊力はアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』を現代的に進化させた最高峰の傑作」と絶賛の嵐が巻き起こっている。デジタル技術が高度に発達した現代だからこそ、論理と視点の盲点だけを突いた極上のアナログ的企みが、グローバルな若い世代にとって究極のエンターテインメントとして機能している。