受験生の答案添削で最も誤答率が高い領域が、交代式との違いを曖昧にしたまま式変形を進めてしまうケースです。これらは見た目が酷似していますが、数学的性質は対極に位置します。
交代式とは、「どの2つの文字を入れ替えても、式の値の符号が反転する多項式」のことです。数式で定義すれば、$g(y, x) = -g(x, y)$ が成り立つ状態を指します。実戦における対称式と交代式の見分け方は非常に単純で、対象の式の2文字を機械的にシャッフルしてみるだけで判別がつきます。
- 対称式:文字を入れ替えても、元の式と「全く同じ式」になる(例:$x^2 + y^2$、$xy$)
- 交代式:文字を入れ替えると、元の式に「マイナスがついた式」になる(例:$x - y$、$x^2 - y^2$)
この2つの間には、代数学における極めてエレガントな定理が成立しています。それは、「交代式を交代式で割ると、商は対称式になる」という事実です。特に2変数の交代式は、必ず因数として $(x - y)$ を含みます。実際に $x^2 - y^2 = (x - y)(x + y)$ と変形できるように、交代式から $(x - y)$ をくくり出すと、残りの部分は必ず対称式(ここでは $x+y$)になるのです。
この性質は、対称式の因数分解や交代式の因数分解において無類の威力を誇ります。3文字の循環式 $a^2(b - c) + b^2(c - a) + c^2(a - b)$ などを展開して因数分解する際、地道に1文字について整理する方法もありますが、「交代式であること」を見抜いていれば、必ず $(a-b)(b-c)(c-a)$ を因数に持つことが確定します。あとは両辺の最高次の係数を比較するだけで、計算用紙を埋め尽くすことなく1行で因数分解を完結させることが可能になります。