アメリカ・カリフォルニアのディズニーランドやフロリダのマジックキングダムにある鉄道は、複数のテーマランドに駅が設置され、パーク内の移動手段(トランスポーテーション)として日常的に利用されています。しかし、1983年に開業した東京ディズニーランドのアトラクションであるウエスタンリバー鉄道は、出発した駅へそのまま戻ってくる周遊ルートしか存在しません。
この特異な構造を生み出した根本原因こそが、ウエスタンリバー鉄道と地方鉄道法の真相です。当時、日本で施行されていた「地方鉄道法(1987年に鉄道事業法へ改組)」では、2点以上の地点を結んで乗客を運ぶ施設は私鉄などと同様の「普通鉄道」とみなされる規定が存在していました。もし複数の駅を設けて移動手段としてしまうと、以下のような法的制約が課されるリスクがあったのです。
- 運賃の別途徴収義務:入園料(パスポート)とは別に、鉄道単独の乗車運賃を設定・申請して徴収しなければならない可能性。
- 運行ダイヤの公認と義務付け:定められた時刻表通りの運行が法的に義務付けられ、パレードや混雑状況に合わせた柔軟な増便・運休が困難になる。
- 安全基準と公道交差の規制:遊園地内の遊戯施設ではなく一般鉄道基準の安全設備や認可が必要となり、ディズニーの世界観を損なうフェンスや踏切警報機の設置を迫られる懸念。
オリエンタルランドと米ディズニーの設計チームは、来園者が追加料金なしでシームレスに魔法の世界へ没入できる体験を最優先しました。その結果、ウエスタンリバー鉄道の駅が1つの理由として「移動ではなく、全行程を巡る景観周遊ツアー」というアトラクション形式を採用し、建築基準法および遊戯施設安全基準の枠組みで運行する英断を下したのです。