顔面麻痺を引き起こす代表的な疾患として、ラムゼイ・ハント症候群とベル麻痺の2つが挙げられます。前者は体内に潜伏していた水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化し、耳の神経を攻撃することで発症します。激しい耳の痛みやめまい、耳周囲の帯状疱疹を伴うことが多く、比較的重症化しやすいとされています。一方、後者は原因不明(主に単純ヘルペスウイルスの関与が疑われる)の特発性麻痺であり、前触れなく片側の顔面筋が弛緩するのが特徴です。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の専門知見においても、発症初期の数日間が運命を分けると強調されています。「水が口からこぼれる」「目が完全に閉じない」「顔の片側が引っ張られる感覚がある」といった初期症状に気づいたら、一刻の猶予もありません。発症から72時間以内にステロイド投与や抗ウイルス薬治療を開始することが、後遺症を防ぐ最大の鍵となります。