佐渡の海を訪れた旅行者が口を揃えて語るのが、「まるで映画のワンシーンに入り込んだような没入感」だ。
名匠・宮崎駿監督が手がけた『千と千尋の神隠し』の劇中、千尋とリンが湯屋を抜け出し、沼の底駅を目指して海を渡るシーンがある。あの水面に浮く丸い木舟のフォルムと、一本の櫂をしなやかに操る動作は、まさに小木港の風景そのものだ。スタジオジブリのスタッフがロケハンでこの地を訪れ、波に揺れる舟の挙動や水音を克明に取材したというエピソードは、今やファンの間で有名な逸話となっている。
かつてスクリーンの中だけで憧れていた景色が、いま眼前で現実のものとなる。櫂が水をかく「ザッ、ザッ」という静かな音を聞きながら、緑豊かなエメラルドグリーンの入江を進む瞬間、誰もが物語の主人公になったかのような錯覚を覚えるはずだ。