後年のインタビューで、武田鉄矢は当時の胸中をこう回想している。「あの瞬間は、役としての達郎ではなく、武田鉄矢という人間が浅野温子という女優の圧倒的な存在感に飲み込まれまいと必死だった。恐怖と必死さが入り混じった、嘘偽りのない本音の叫びだった」と。
男としての不器用さ、格好悪さ、そしてそれを遥かに凌駕する圧倒的な愛の熱量。武田が体当たりで演じ切ったからこそ、視聴者は彼の泥臭さに自分自身を重ね合わせ、心を揺さぶられたのだ。
浅野温子もまた、武田の情熱を受け止めるために全身全霊で撮影に挑んでいた。二人の役者の魂の衝突が生み出した熱量こそが、時空を超える名作を生み出す原動力となった。