『お化けのロック』の物語は、1977年(昭和52年)5月からTBS系列の水曜劇場枠で放送されたホームドラマ『ムー』から始まります。東京・下町の足袋屋「うさぎ屋」を舞台にした本作は、一見すると伝統的なホームドラマの体裁を保ちながら、生放送の導入やアドリブの多用など、実験的な演出が随所に散りばめられた異色作でした。
当時、すでにトップアイドルとして君臨していた郷ひろみ(うさぎ屋の次男・拓郎役)と、悠木千帆から改名したばかりの樹木希林(お手伝いさん・金田役)の共演は、まさにキャスティングの妙でした。当時20代前半の若きプリンスであった郷ひろみに対し、樹木希林はすでに30代半ばのベテラン個性派。この2人が劇中で見せるテンポの良い掛け合いは、瞬く間に視聴者を虜にしました。
関係者の回想録や当時のインタビューによると、劇中で2人が歌い踊るシーンは、当初から綿密に計画されていたわけではありませんでした。現場の熱気と2人の絶妙な間合いを見た演出家・久世光彦の「この2人に本気でロックを歌わせたら絶対に面白くなる」という直感的な閃きから、郷ひろみ・樹木希林デュエットという前代未聞の企画が本格的に動き出したと伝えられています。