明治期には政治的和解の記念碑として建てられた上野恩賜公園の西郷隆盛像ですが、昭和から平成、そして現在に至るまで、その社会的機能は大きく変遷してきました。
JR上野駅公園口や京成上野駅からすぐの立地にあることから、昭和の高度経済成長期から平成にかけて、上野の西郷像は「東京で最も有名な待ち合わせ場所」の代名詞となりました。地方から上京してきた人々にとっても迷いようのないランドマークであり、数多くの映画やドラマ、文学作品の舞台となってきました。
現在ではスマートフォンの普及によりピンポイントでの合流が容易になったものの、訪日外国人観光客(インバウンド)による記念撮影スポットとしての人気はかつてない高まりを見せています。現地を訪れる観光客への取材やSNS上の声を見ても、「東京の真ん中で、刀を差しながらも犬を連れた穏やかなサムライに出会える特異な場所」として高い評価を得ています。
一方で、鹿児島を訪れて城山の軍服像を目にした旅行者からは、「上野の西郷さんと同じ人物とは思えないほど鋭く威厳に満ちている」「地元の西郷隆盛に対する敬意の深さを肌で感じた」といった声が多数寄せられており、東西における「西郷像のギャップ」そのものが歴史観光の大きな魅力として機能しています。