胸部X線検査の第一の目的は、自覚症状のない段階での肺がん・結核・肺炎・心不全・心拡大などのスクリーニングだ。日本では健康診断における胸部X線検査が労働安全衛生法に基づく法定項目のひとつとなっており、事業者に実施義務がある。また、肺がん検診における胸部X線検査は市区町村が実施する対策型検診の中核を担い、40歳以上の住民を対象に年1回の受診が推奨されている。
では、具体的に「どこまでわかる」のか。胸部X線検査で読影可能なのは主に以下の異常所見である。
・肺野の腫瘤影・結節影:肺がんの可能性を含む。ただし1cm未満の小型腫瘤は見逃されることもある。
・浸潤影・すりガラス影:肺炎や間質性肺炎、肺水腫などの可能性。
・空洞影:結核や肺膿瘍、進行した肺がんなど。
・胸水貯留:心不全、感染症、悪性腫瘍の胸膜転移など。
・心拡大・縦隔陰影の拡大:心不全、心筋症、大動脈瘤、縦隔腫瘍などの手がかり。
・気胸:肺の虚脱。若年男性に多い自然気胸も検出できる。
ただし、ここに大きな落とし穴がある。胸部X線検査はあくまで「平面の影絵」であり、病変の質的診断(良性か悪性か)まではできない。影の形や大きさ、経時変化から「怪しいかどうか」を判断するのが限界で、確定診断には胸部CT検査や喀痰検査、気管支鏡検査、生検などが必要になる。この点を理解していないと、「再検査=がん確定」という誤解につながりかねない。