椀物が出された際、吸い物の蓋が密着して開かない経験をした人は多いはずだ。無理に力任せに開けようとすると汁が飛散したり、貴重な漆器を傷つけたりする原因になる。左手を椀の縁に添え、右手を蓋の側面に当てて軽く内側に押し込むようにすると、空気が入ってすんなり蓋が持ち上がる。
外した蓋の置き場所にもルールがある。右側にあるお椀の蓋は折敷(おしき)の右外側へ、左側の器の蓋は左外側へと返して置くのが基本だ。裏返して置くことで、蓋の内側に付いた水滴がテーブルを濡らすのを防ぐと同時に、繊細な蒔絵(まきえ)の表面を傷つけずに済む。
料理を食べ終えたら、蓋を元の通りに戻す。このとき、蒔絵の柄がぴったり合うように戻すのが「ごちそうさまでした」の合図となる。結露した蓋を吸い物椀の上にひっくり返して重ねる行為は、漆を傷める大きな要因となるため絶対に避けたい。