トコジラミは感染症を媒介する衛生害虫ではないため、空港や港湾における検疫・バイオセキュリティ(公衆衛生)の法的枠組みでは水際阻止の対象外となっている。これが侵入防止を難しくしている構造的な盲点だ。厚生労働省(MHLW)も啓発活動を進めるが、実質的な防波堤の役割は民間セクターに委ねられている。
インバウンド客を迎え入れるホテル・インバウンド宿泊産業では、客室清掃スタッフへの発見トレーニング導入や、定期的な熱風・スチーム処理による予防的メンテナンスが急務となった。また、民間の害虫駆除・ペストコントロール業界には宿泊施設や一般家庭からのSOSが殺到しており、公益社団法人日本ペストコントロール協会への相談件数も高水準で推移している。
有志によって運営される「トコジラミマップ(Bedbug Map Japan)」などの情報共有サイトでは、大都市圏を中心に被害報告が可視化されつつある。事業者は風評被害を恐れて隠蔽するのではなく、早期発見と適切な情報開示、迅速な熱処理による封じ込めを標準化する姿勢が問われている。