週末の「ひろめ市場」に足を踏み入れると、その圧倒的な熱量に気圧される。40軒以上の飲食店がひしめき、中央のテーブル席では昼夜を問わずジョッキがぶつかり合う。高知独特の「返杯(へんぱい)」文化――杯を酌み交わし、飲み干しては相手に返す伝統――は、初対面の壁を一瞬で打ち砕く魔法の装置だ。
「観光客も地元民も、ここでは同じテーブルを囲めば5分で仲間になれる」。市場内の屋台で店主が笑うように、隣り合った男女がカツオの塩タタキや地酒「酔鯨」をシェアする姿は日常茶飯事だ。だが、地元常連によれば、ただ座れば誰とでも繋がれるわけではない。混雑ピークの少し前、16時前後に席を確保し、オープンな雰囲気で隣席に軽く声をかけるのが、自然な会話を生む暗黙の作法となっている。