近年、タイパ(タイムパフォーマンス)を重視するレシピ動画などで「電子レンジだけで完結する下茹で法」が人気を集めています。しかし、ここには見落としてはならない科学的な盲点が存在します。
ほうれん草の下茹でを電子レンジで行う場合(600Wで約1分30秒〜2分加熱)、熱によって細胞壁が破壊され柔らかくはなりますが、レンジ加熱そのものではシュウ酸は野菜の外へ流れ出ません。密閉されたラップや耐熱容器の中にシュウ酸が閉じ込められた状態になっています。
そのため、レンジから取り出した後は直ちに冷水・流水に1〜2分さらす工程が不可欠です。この水さらしを省いてそのまま調味してしまうと、高濃度のシュウ酸をそのまま摂取することになります。
また、ほうれん草を水にさらす理由には、アクの希釈だけでなく「色止め」の重要な役割があります。加熱後の余熱を氷水や冷水で急冷することで、クロロフィルが熱と酵素によって褐色色素(フェオフィチン)へ分解されるのを食い止め、瑞々しい深緑色を固定できます。ただし、水に5分以上浸し続けると水溶性のビタミンCやカリウムが過剰に流出するため、冷めたら素早く引き上げることが肝要です。