どれほど時代が移ろい、テクノロジーが進歩しようとも、製造工程の核心部分だけは自動化を拒み続けている。その日の気温、湿度、海藻自体の乾燥度合いによって、煮炊きに要する時間も水加減も刻一刻と変化するからだ。
大釜の前で櫂(かい)を握り、立ち上る磯の蒸気に包まれながら粘りを見極める職人の眼差しは鋭い。ヘラを持ち上げた時の垂れ落ち方、表面に走る微細な波紋、そして鼻腔を突く香りの変化。煮詰めた液体を木枠やすのこの上に極薄く流し込み、冷風で素早く粗熱を取る。手際よくくるくると巻き上げられる褐色の帯は、計算機では導き出せない身体感覚の結晶に他ならない。