インターネットの掲示板やSNS上で論理的思考という言葉が使われる際、しばしば「議論で相手を言い負かすための技術」「感情を切り捨てた冷徹な正論」という誤ったイメージで語られがちです。しかし、これは論理的思考の本質から最もかけ離れた誤解と言わざるを得ません。
ビジネスにおける論理的思考の真の目的は、「異なる利害関係や背景を持つ他者と、最短距離で共通認識を形成すること」にあります。古代ギリシャの哲学者アリストテレスが弁論術で説いたように、人を動かすのは論理(ロゴス)だけではありません。話し手の信頼性(エトス)と聞き手への共感(パトス)が揃って初めて、相手は自発的に行動を起こします。
どんなに正密なロジックツリーを構築しても、相手の置かれた心理的立場や社内政治の力学を無視した「冷たい正論」を突きつければ、相手は防衛反応を示し、合意形成は破綻します。優れたビジネスパーソンが実践する論理的思考とは、相手の脳の負担を減らし、安心して判断を下せるようサポートするための「極めて親切なコミュニケーションの作法」なのです。