そもそも、なぜ「はらぺこあおむしのうた」は世代や時代を超えてここまで子どもたちを惹きつけるのでしょうか。その背景には、作曲者である新沢としひこ氏の卓越した保育的アプローチと音楽的設計が存在します。
新沢としひこ氏は、自身も保育士としての勤務経験を持つシンガーソングライターです。「にじ」や「世界中のこどもたちが」など、今や保育ソングのスタンダードとなった名曲を数多く世に送り出してきました。エリック・カールの絵本を楽曲化するプロジェクトにおいて、新沢氏は単に絵本のテキストをメロディに乗せるだけでなく、幼児が言葉を声に出したときの心地よいアクセントや、曜日・数の概念が自然と身につくリズミカルなフレーズ感を綿密に計算して作曲を行いました。
当時のインタビューや関係者の証言によると、絵本の見開きページをめくるタイミングと音楽の展開が完全に見合うよう、小節数や間奏の長さに至るまで徹底的な試作が重ねられたと伝えられています。お腹を空かせたあおむしが月曜日から金曜日まで様々な食べ物をかじっていくリフレインの心地よさ、そして美しい蝶へと羽化する壮大なフィナーレ。視覚と聴覚が融合したこの設計こそが、幼児教育現場で30年以上にわたり歌い継がれる理由です。