本作の評価を決定づけた要因として、地上波本編と完全連動したHuluオリジナルスピンオフドラマ『トドメのパラレル』の存在と、脇を固めた子役・ゲスト俳優陣の重厚な演技力を無視することはできません。
テレビドラマにおけるスピンオフといえば、通常は本編のコメディ要素を抽出した番外編やサイドストーリーが主流でした。しかし『トドメのパラレル』が提示した構造は極めて実験的かつ残酷なものでした。本編で旺太郎がキスによって殺され、7日前の世界へと意識をタイムリープさせた瞬間、「旺太郎が死亡したまま残された元の世界」がパラレルワールドとして存続し、そこで何が起きたかを描き出す試みです。
遺された旺太郎の遺体を前にして崩壊していく人間関係、尊氏が罪悪感と猜疑心から狂気の怪物へと変貌していく過程、そして旺太郎を失った宰子の凄惨な運命が、ダークなトーンで徹底描写されました。このスピンオフによって、「主人公が過去を都合よくやり直すタイムリープの裏には、無数の見捨てられた破滅の世界が存在する」という因果応報の倫理的重みが加わり、本編のサスペンス度を劇的に引き上げました。
さらに、12年前の「プロメテウス号沈没事故」を背負う子役たちの演技が、作品の屋台骨となっていました。
- 大西利空(幼少期の旺太郎役):家庭崩壊の悲劇に直面し、泥水をすするように生きていく少年の絶望を表現。その後、映画『水は海に向かって流れる』などで注目を集め、若手実力派俳優として大きく開花しました。
- 豊嶋花(幼少期の宰子役):事故のショックと「キスで人を死なせる」呪縛を背負った孤独な少女像を熱演。数々のドラマやNHK大河ドラマ『どうする家康』などで卓越した表現力を発揮しています。
- 荒木飛羽(幼少期の尊氏役):名門家庭へ養子として迎え入れられた少年の繊細さと歪んだプライドを体現し、現在も若手個性派としてキャリアを積み上げています。
加えて、光石研(旺太郎の父・堂島旺役)や奥貫薫(母・光代役)、高橋ひとみ(並樹京子役)、山田明郷(並樹尊役)といったベテラン勢の抑制された演技、さらにはゲスト出演者として登場した泉谷しげる(宰子の叔父・佐藤茂役)らの生々しい存在感が、浮世離れしがちなSF設定を骨太な人間ドラマへと定着させていました。