かつて日本の香水市場といえば、ライトでフレッシュなシトラス系か、分かりやすく甘いフローラル系が主流だった。しかしここ数年で劇的な意識の変化が起きている。他人に強烈なアピールをするための「装飾」としての香りではなく、自分自身の情緒を整え、ごく親しい人にだけ気づいてもらう「気配としての香り」へのシフトだ。
この潮流に完璧に合致したのが本作である。パウダリーな柔らかさと、肌本来の温もりが溶け合った香気は、まるで仕立ての良いシルクのインナーを身につけているかのような安心感を纏い手に与える。「香水を着けている」のではなく「その人自身が良い香りを放っている」という錯覚を生む構造が、過度な匂いに拒絶反応を示しがちな日本の都市生活に驚くほど自然に溶け込んだ。