政権中枢の空気を知る上で極めて貴重な資料となったのが、没後に出版された『安倍晋三 回顧録』です。本書の中で安倍氏は、財務省との壮絶な主導権争いや、ドナルド・トランプ米大統領、ウラジーミル・プーチン露大統領との緊迫した首脳会談の裏側を赤裸々に明かしています。
「財務省は、政権が倒れても財政再建を優先しようとする」「外交とは、相手の懐に飛び込みつつも、こちらのカードを最後まで見せない冷徹な心理戦だ」——(『安倍晋三 回顧録』より抜粋・要約)
このような肉声からは、歴代政権が苦しんできた省庁の縦割りや事前の根回し慣行を打破しようとする、冷徹なリアリストとしての執念が伺えます。
一方、ネット空間(SNSや掲示板)における世論の推移を検証すると、安倍氏に対する評価は極端な情報接触バイアスに晒されてきました。支持派コミュニティでは外交成果や愛国的な姿勢が過大評価される傾向があり、批判派コミュニティではスキャンダルや失政のみが切り取られて拡散されるという、エコーチェンバー現象が加速しました。現場の客観的ファクトよりも、各陣営のナラティブ(物語)が優先されて消費されたことが、評価の断絶をさらに深めたと言えます。