役所広司の本名は「橋本広司(はしもと こうじ)」。その長男として東京都で誕生したのが俳優の橋本一郎です。父親がすでに日本を代表する名優として君臨していた家庭環境にありながら、彼の青年期は決して華美な芸能一家のそれとは異なっていました。
学歴を振り返ると、彼は成城学園の系列校で学び、成城大学法学部法律学科を卒業しています。特技には柔道初段や茶道中級といった武道・伝統芸能が並び、心身の規律を重んじる堅実な気風が育まれてきました。大学時代に映画研究部へ籍を置いたことが、映像表現の世界へ本格的に足を踏み入れる直接の転機となります。名優の息子として育ちながらも、安易に親のコネクションに頼るのではなく、自主映画制作の泥臭い現場から映画づくりの面白さと厳しさを体感していきました。
プロの俳優としての公式デビューは、2007年公開の映画『俺は、君のためにこそ死ににいく』でした。翌2008年には、高校野球の補欠選手たちにスポットを当てた青春映画『ひゃくはち〜我ら補欠 夢と煩悩のかたまり〜』に出演。坊主頭に泥まみれになりながら等身大の球児を演じきり、映画関係者の間で「骨太で嘘のない芝居ができる若手」として強い印象を残しました。甘いマスクで売るアイドル的人気ではなく、画面の端にあっても確かな生活感を醸し出せる佇まいこそが、彼の俳優人生の強固な基盤となったのです。