「米倉涼子のダンスはなぜ国境を越えてブロードウェイの目の肥えた批評家や観客を唸らせたのか」――その核心は、単なる手足の長さやステップの正確性を超えた、「ボブ・フォッシー・スタイル」との運命的な親和性にあります。
ミュージカル『CHICAGO(シカゴ)』の振付で知られるボブ・フォッシーのダンススタイルは、内股のポーズ、肩の微細な上下、指先の細かいアイソレーションなど、独特の脱力と鋭角的なシルエットを要求します。大柄なダンサーほど持て余しがちな長い手足を、米倉涼子は15年間のバレエ経験で培った精密な重心コントロールによって、極めてドラマティックな「線の芸術」へと昇華させました。
2012年、日本人女優として初めてブロードウェイのアンバサダー劇場でロキシー・ハート役を演じ、全編英語での歌唱とダンスを披露した際、現地の辛口演劇評は彼女のステージを「息をのむほどゴージャスで、皮肉と愛嬌を併せ持った完璧なロキシー」と称賛しました。単に振付をなぞるのではなく、愛人殺しの悪女でありながらどこか憎めないロキシーの身勝手さと孤独を、つま先の角度一つ、ハットの傾き一つで雄弁に語る演技派ダンサーとしての才能を開花させたのです。