インターネット上の掲示板やSNSでは、「膵臓癌で背中が痛むようになったら、すでに手遅れで手術もできない」といった極端な言説が散見されます。しかし、現代の医療水準においてこの認識は正確ではありません。
確かに神経浸潤を伴う激痛は進行癌で多く見られますが、病変が比較的小さな段階であっても背中が痛むケースは存在します。例えば、腫瘍が主膵管を塞ぐことで膵液の流れが滞り、膵管の内圧が上昇して「限局性の閉塞性膵炎」を併発した場合、腫瘍自体が小さくても強い背部痛や腹痛が生じます。このタイミングで異常を察知して受診できれば、治癒切除(根治手術)が可能なステージで発見できるケースも十分にあります。
「背中が痛むからもう手遅れかもしれない」と恐怖から受診を先延ばしにする心理(回避行動)こそが、最も避けるべきリスクです。痛みの原因が膵臓癌ではなく、慢性膵炎、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、あるいは胆石症や尿路結石、胃潰瘍といった他の治療可能な消化器疾患である可能性も多々あります。自己判断で絶望することなく、科学的な鑑別検査を速やかに受ける姿勢が極めて重要です。