他者からの怒号や叱責に遭遇したとき、人間の脳内では生命の危機に対処するための緊急アラームが作動している。脳の深部に位置する偏桃体(へんとうたい)が「怒り」という外部刺激を即座に検知し、自律神経系へ交感神経優位の指令を発する。これにより、脈拍の急上昇、視野の狭窄、思考停止といった、いわゆる「闘争か逃走か(Fight or Flight)」反応が引き起こされるのだ。
心理学の知見によれば、人間は社会的な拒絶を身体的な痛みと同等、あるいはそれ以上に脅威と感じる性質を持つ。太古の時代において、集団からの孤立や排除はそのまま死を意味していた。現代社会において上司や同僚から叱責される体験は、脳の古層にとって「集団からの追放リスク」として翻訳される。恐怖心の原因は、まさにこの古代から受け継がれた自己防衛システムの過剰反応にある。