全国のカレー愛好家の間で頻繁に混同されるのが、福岡・博多を拠点とする「ナイルカレー」の存在です。「銀座ナイルの支店なのか」「系列店なのか」という疑問がネット上で散見されますが、結論から言えば、両者は歴史的ルーツと運営母体を完全に異にする別個のブランドです。
博多ナイルカレーは、昭和20年代後半から30年代にかけて博多駅地下街や名店街を中心に爆発的な人気を誇った、九州における本格カレーの先駆けです。創業者が生み出した黄色い欧風寄りのルーと深いコクは「博多っ子のソウルフード」として愛されましたが、時代の変遷とともに一度は暖簾を下ろす憂き目に遭いました。しかし、熱烈なファンの熱望によって地元企業がプロジェクトを立ち上げ、「復刻ナイルカレー」として奇跡的な復活を遂げました。
南インドのスパイス使いをベースに骨付き鶏肉を崩して食べる銀座のスタイルに対し、博多ナイルはどこか懐かしい昭和の洋食カレーのDNAを受け継ぐ濃厚な味わいが持ち味です。現在は博多駅地下街の店舗だけでなく、レトルト通販を通じても全国展開されています。名称の偶然の一致が歴史の交差点を生み出していますが、それぞれが東西の食文化史を代表する別々の金字塔です。