2000年代初頭、RIP SLYMEはまさに時代の寵児だった。特に「楽園ベイベー」の爆発的なヒットは、それまで一部のカルチャーにとどまっていたヒップホップを、一気に全国区の夏ソングへと押し上げた。キャッチーなフックと爽快なトラックは、若者たちの夏を彩る定番として日本中で鳴り響いた。
しかし、表舞台での華々しい成功と引き換えに、制作現場では絶え間ないプレッシャーが重くのしかかっていた。ヒット曲を生み出し続けなければならないというメジャーの至上命令と、アーティストとしての純粋な初期衝動とのギャップ。その最前線でメロディやリリックの構築に心血を注いでいた彼にとって、かつて楽しかった音楽制作は次第に過酷なタスクへと姿を変えていったのである。