庵野秀明監督の創作の原点において、1979年に放映された『機動戦士ガンダム』(ファーストガンダム)は決定的な転換点でした。当時、大阪芸術大学の学生だった庵野監督は、従来の巨大ロボットアニメの枠組みを根底から破壊した同作に凄まじい衝撃を受けたと、数々の自著やインタビューで明言しています。
庵野監督がガンダム、とりわけ富野由悠季監督の演出を高く評価する理由は、主に以下の3点に集約されます。
- 徹底したミリタリズムと世界観構築:単なるヒーローロボットではなく、兵器としての「モビルスーツ」の運用思想、補給線や戦力比を描き切ったリアリズム。
- 富野コンテ特有のダイナミックな空間把握:3次元の宇宙空間における戦術的機動や、視線の誘導計算が完璧になされた絵コンテの圧倒的切れ味。
- 人間心理の赤裸々な群像劇:善悪の二元論を廃し、戦場で生きる少年兵や大人のエゴイズムを冷徹に描写したドラマ性。
当時のアマチュア制作集団「DAICON FILM」での活動や、後の『トップをねらえ!』『新世紀エヴァンゲリオン』における緻密な艦隊戦・メカニック演出の根底には、ファーストガンダムから受けた強烈な影響が色濃く息づいています。