バーデハウスふくち(正式名称:南部町健康増進センター)は、1992年に旧福地村の主導で整備された東北有数のクアハウス施設です。ヨーロッパ、特にドイツの伝統的な温泉治療(クアパルク)の概念を導入し、水着着用で入る多彩な機能浴槽や運動浴プール、サウナ、トレーニングジムを完備した総合健康保養施設として鳴り物入りで誕生しました。
しかし、開業から30年余りが経過した2026年代に入り、施設の根幹を揺るがす致命的な問題が表面化します。最大の要因となったのが機械設備・特殊配管の深刻な老朽化です。温泉水や塩素を常時循環させるクアハウスの設備は一般建築物よりも腐食進行が格段に早く、ボイラー、濾過装置、空調換気システム、プール躯体の劣化が同時に限界を迎えました。
さらに追い打ちをかけたのが光熱水費の歴史的な高騰と累積赤字の膨張です。広大な温水プールと複数の浴槽を年中適温に保つためには膨大な重油および電力を消費します。指定管理者制度による運営が行われていたものの、燃料費高騰とコロナ禍以降の利用控えが重なり、年間の運営収支は大幅な赤字に転落。南部町の一般会計からの繰出金・指定管理料補填は年間数千万円から1億円近くに達する年もあり、人口約1万6,000人の町財政にとって耐え難い重荷となっていきました。
町が実施した詳細な施設診断調査では、施設を延命・全面改修して安全基準を満たすために概算で10億円から15億円以上の公費投入が必要と試算されました。少子高齢化が進み、インフラ維持や福祉予算の確保が急務となる中、町議会および行政執行部は「単一施設への過大な財政集中は町民全体の利益を損なう」と判断し、休館から事実上の閉館、そして解体を視野に入れた方針決定へと舵を切ることとなりました。