成駒屋の女方として生きる宿命は、児太郎の祖父である人間国宝・七代目中村芝翫の時代から脈々と受け継がれてきた。気品に満ちた佇まい、情念を内包しながらも崩れない品格。それらは幼少期から祖父や父の舞台を間近で浴びるように見つめてきた児太郎の肉体に、深く染み込んでいる。
父である福助の手取り足取りの指導はもちろん、祖父が遺した膨大な芸の記憶が児太郎の大きな支えとなった。伝統を守るとは、過去の形をただなぞることではない。時代の空気を吸い込みながら、先人たちが命を削って磨き上げた美を己の肉体で再生させることだ。成駒屋の屋号が放つ誇りと責任が、児太郎を本物の表現者へと押し上げていった。