加藤一二三九段の現役生活のフィナーレには、まるで映画のような劇的な巡り合わせが用意されていました。2016年12月24日、加藤九段が持つ最年少プロ入り記録を62年ぶりに塗り替えた藤井聡太四段(当時14歳2か月)の公式戦デビュー戦の相手を務めたのです。
当時76歳だった加藤九段と14歳の藤井四段による「62歳差対局」は、将棋界のみならず社会的な大ニュースとなりました。「神武以来の天才」から「新時代の天才」へとバトンが渡された瞬間であり、敗れはしたものの、盤上に覆いかぶさるようにして最後まで最善手を追求した加藤九段の姿は観る者の胸を打ちました。
その後、2017年6月に順位戦の降級規定により、77歳で惜しまれつつ現役を引退しました。引退会見で語られた「私の将棋人生に一片の悔いもありません」という言葉の通り、通算対局数2505局(歴代1位)、通算1324勝(歴代3位)という驚異的な戦績を残し、63年間に及ぶ過酷なプロ生活に幕を下ろしました。