作曲を手がけた久石譲のペンは、映画音楽の歴史に残る巧緻な仕掛けをこの曲に施している。最大の特徴は、西洋音楽の伝統的なドミナント進行をあえて避け、日本古来の民謡や雅楽に通じる旋法(エオリアン・スケール)を取り入れた点にある。
劇的な解決を保留したまま流れるメロディラインは、聴き手に「割り切れない感情」や「自然の底知れぬ深淵」を想起させる。西洋クラシックの手法でオーケストレーションを施しながら、骨格には東洋的なミニマリズムを宿す。この緻密な計算があるからこそ、シンプルなドレミの連なりが聴く者の琴線を揺さぶり続けるのだ。